小・中学生の部【優秀賞】たいふういっか/ベタのピース
更新日:2024年2月26日
受賞作品を、原文のまま掲載します。
編集の都合上、すべて横書きにしています。
注:敬省略
ぼくは「台風一過」のことを「台風一家」とずっと勘違いしていた。
でも、今でも台風の時には台風一家がびゅーんとやって来るような気がする。
お父さん台風、お母さん台風、そして子供の台風だ。
台風一家はぴゅうぴゅう音をたててやって来る。
もうすぐ日本に上陸だ。どこらへんに上陸しようかなあ。それとも縦断か。そんなことを相談している。
今は真っ青な空だけれども、もうすぐ台風一家がやって来て大暴れする。
お父さん台風がいっぱい雨も降らせると、お母さん台風がおなかからいっぱいの風を吹き出す。こどもたちはそれをおもしろがってぶんぶんと廻りだす。今にも空が真っ暗だ。
人間たちは大忙しだ。風に屋根を吹き飛ばされないように、庭の自転車や鉢植えが倒れないようにいっぱいひもでくくっている。準備は万端だ。
びゅーん、びゅーん、びゅわーん。ごごー、ごごー、ごごー。台風一家はひとしきり大暴れすると、お父さん台風が「よし、これくらいにしとこうか」とお母さん台風に尋ねる。お母さん台風は「そうね、これくらいにしておきましょう」と子供たちを眺める。子供の台風は「おなかがすいたよ。お母さん」と言い出した。
台風一家が通り過ぎるとそこにはまた大きな青空だ。真っ青な空が返ってきた。
きっと台風一家の置き土産なんだろう。ぼくはずっとこの話を信じていた。そしてみんなには内緒だけれども今でも台風が近づいてくると台風一家は何を話し合ってるんだろうと考えてしまうのだ。 おわり
編集の都合上、すべて横書きにしています。
注:敬省略
たいふういっか/ベタのピース
台風の季節がやってきた。ぼくは「台風一過」のことを「台風一家」とずっと勘違いしていた。
でも、今でも台風の時には台風一家がびゅーんとやって来るような気がする。
お父さん台風、お母さん台風、そして子供の台風だ。
台風一家はぴゅうぴゅう音をたててやって来る。
もうすぐ日本に上陸だ。どこらへんに上陸しようかなあ。それとも縦断か。そんなことを相談している。
今は真っ青な空だけれども、もうすぐ台風一家がやって来て大暴れする。
お父さん台風がいっぱい雨も降らせると、お母さん台風がおなかからいっぱいの風を吹き出す。こどもたちはそれをおもしろがってぶんぶんと廻りだす。今にも空が真っ暗だ。
人間たちは大忙しだ。風に屋根を吹き飛ばされないように、庭の自転車や鉢植えが倒れないようにいっぱいひもでくくっている。準備は万端だ。
びゅーん、びゅーん、びゅわーん。ごごー、ごごー、ごごー。台風一家はひとしきり大暴れすると、お父さん台風が「よし、これくらいにしとこうか」とお母さん台風に尋ねる。お母さん台風は「そうね、これくらいにしておきましょう」と子供たちを眺める。子供の台風は「おなかがすいたよ。お母さん」と言い出した。
台風一家が通り過ぎるとそこにはまた大きな青空だ。真っ青な空が返ってきた。
きっと台風一家の置き土産なんだろう。ぼくはずっとこの話を信じていた。そしてみんなには内緒だけれども今でも台風が近づいてくると台風一家は何を話し合ってるんだろうと考えてしまうのだ。 おわり