第24回 一般の部 最優秀賞受賞者寄稿を読む
更新日:2024年3月22日
第24回白鳥省吾賞を受賞して
齋藤 茂登子(第24回 一般の部 最優秀賞 受賞者)
受賞通知をいただいた時、目の前に懐かしい風景が浮かびました。旧栗原郡若柳町の迫川土手から眺めた春、残雪駒形の栗駒山。町を南北に分け流れる迫川の冬、白鳥がゆったりと泳ぐ。全身痛の難病を患い、二十余年。身体障害にもなりました。通院以外の外出はほとんどない暮らしです。
平成三十年に、二十日違いで亡くなった両親の葬儀にも行けませんでした。盛岡から新幹線に乗れば、くりこま高原駅は遠い場所ではないのに、墓参も叶いません。
私にとっての故郷は、あまりにも遠く、せつないところです。
だからこそ、故郷は愛おしく美しくあり続けます。
それはきっと、白鳥省吾先生も同じだと思います。時代が変わろうと、その土地に宿る気質魂は同じ光を放ち続けますから。
白鳥省吾賞創設を知り、応募したいと思いながら、ひと文字も詩の言葉が出てきませんでした。いつか……と、年月が経ちました。
ふと、ある日。
母校若柳中学校校歌。今でも、日に一回歌っています。中学入学以来、ほぼ毎日。『豊かの栄え』で始まる、白鳥先生の歌詞です。
気づきました。
私は日本一、白鳥先生の言葉を歌っている。
最優秀賞に選んでいただいた『うたう』は、白鳥先生の言葉を長年歌い続けてきた土壌で描いた故郷です。
選考先生方々は、懐愁の想いを掬い取り、詩として読んでくださったのだと、感謝申し上げます。小さな日常の私を見つけていただき、本当にありがとうございます。
末筆ながら、栗原市益々のご発展と、市民皆さまのご多幸を、盛岡の地より祈っております。
注:音声読み上げソフトの使用に配慮して一部表記を変更しています。