一般の部【最優秀賞】うたう／齋藤 茂登子

受賞作品を、原文のまま掲載します。
編集の都合上、すべて横書きにしています。
注：敬称略

うたう／齋藤 茂登子

おはよがすぅ   リヤカーひいた農家の
おばあさんたちが夏の朝
野菜、花っこ、いらねすかぁ
どうですかと   庭先でうたう
ふるさとの栗原若柳は
歌があふれる町だった
うたうの   うたうの   歌で言うの
友だちを誘うのも
だれ子ちゃん、あーそびぃましょ
登校も
それ美ちゃん、いーきぃましょ
語尾を上げ気味で   歌で言うの

かいすぅー   アイスを買いにいくの
友だちと弟と夏の午後
かいすぅーと   お店の人に声かけて
雪の結晶形がついたアイスケースを
開けるの   お目当ては当たりつき
バニラ味の棒アイス
銀紙ペラペラはがしてペロペロなめて
とけてトロトロ手がベタベタだけれど
棒に茶色の三文字があるかに夢中なの
あ、当たりだっちゃぁ
当たったのはわたしなのに
棒のアタリを言うのは
友だちだった
夜は誰もが静かだった
迫川に白鳥がいる冬以外
うちの近くで声はしない
たまにたまに
「おばんでがすぅ」
こんばんは、あいさつが聞こえる

大人も子どもも   栗原の昔は音符
うたうの   うたうの   歌で言うの
おらほの語り方（かだりがだ）
聞いてけらいん
いいとこだっぺ