一般(高校生以上)の部【審査員奨励賞】亥の子祭り/山中 美月
更新日:2019年2月4日
受賞作品を、原文のまま掲載します。
編集の都合上、すべて横書きにしています。
注:敬称略
亥の子祭り
いつもは気の少ないこの街
今夜は少しにぎやかだ
がやがや わいわい ざわざわ
どんどんこちらに近づいて来る
ピンポーン! 亥の子でーす
さぁやって来た
今日は年に一度の亥の子祭り
小学生の子どもらが
「亥の子唄」を歌いながら
数本の縄をつけた大きく丸い石を
宙に浮かせて地面をつく
各家庭の繁盛を祈って周る
石は土のクッションによって
何とも言えない良い音を出す
深く力強く
地面を振動させる
子どもの元気な声と
ギシギシと鳴る縄の音が合わさり
そこにハーモニーが生まれる
決して美しいとは言えない
でも心地よい音なのだ
近年、問題視される少子化
「そろそろ終わりか…」
そんな声もちらほら
そして現実に
幼少期から親しんできた
代々伝わるこの祭り
しずかな街がほんの少しにぎわう
今日の夜、この光景
しっかり心に焼き付けておこう
いつまでも思い出せるよう
ふるさとを感じられるよう
あの音とともに胸にしまっておこう