小・中学生の部【特別賞】下校中の闘争心/高橋 莉央
更新日:2019年2月4日
受賞作品を、原文のまま掲載します。
編集の都合上、すべて横書きにしています。
注:敬称略
下校中の闘争心
反対側の歩道に誰かいる
私は信号で彼に追いついて
同じくらいのスピードで歩いている
同じ学校の生徒のようだ
反対側の歩道にいる彼は
ラケットを持っているではないか
同じ部活の後輩ではないか
やたら腹の立つあいつではないか
部活を引退したとはいえ、先輩だ
歩くスピードごときで負けてたまるか
奴に気付かれたのか
奴のスピードも徐々に速くなっている
静かな戦いが始まった
まだ現役だった頃
同じことを何度もアドバイスしているのに
聞き流して実行しようとしなかった奴に
負けてたまるか
先輩って言ってももう引退しただろ
俺は男だし、女なんかに
負けてたまるか
曲がり角がついに来た
私は左に曲がるが…あっ
奴は走り出した
奴が戦いを放棄したようにも感じる光景
私が勝ったことにしよう
この世の中は思想の自由を活用すれば
いくらでも広がり
いくらでも楽しくなる
感謝しとくよ。少年。