小・中学生の部【特別賞】あの日の私／鈴木 毬子

受賞作品を、原文のまま掲載します。
編集の都合上、すべて横書きにしています。
注：敬称略

あの日の私／鈴木   毬子

   時計が動いてる   いっぱい本がある
   昔私が傷つけたテレビ
   少し汚れたノート   ぶちまかれた教科書
   これは私の居場所

   キラキラした空気   運命の事故
   会えない父   好きな人
   嫌いな人
   これは私の脳内

   白目むいた青い猫が何百匹
   二重の目が一つ   大量の紙類
   本の題名   樹の上に三本の木
   これは私の落書き

   触（さわ）れない何か  消し去ったどれか
   失いたくない誰か   忘れてしまった何処（どこ）か
   捨ててもいい何時（いつ）か   放り投げた何故（なぜ）か
   どこまでも堕ちてく私

   割れて砕けてくピアノ
   私はその時を見てた
   壊れてった家
   私は見なかったフリをした
   歴史がある古い本
   私はペンでぐしゃぐしゃにぬりつぶした

   あの子は泣いてた   あの子は叫んでた
   あの子は助けて欲しがってた
あの子はあの子はあの子はあの子はあの子は
   でもそんなの知らない

   見捨てようとして気付いた
   ああ   あの子は私、私はあの子
   ピアノは精神   家は肉体   本は人生
   ごめんね

   やっと、止まった