小・中学生の部【特別賞】二〇二〇年夏/齋藤 悠一郎
更新日:2021年1月21日
受賞作品を、原文のまま掲載します。
編集の都合上、すべて横書きにしています。
注:敬称略
川が氾濫しそうだと
人は川沿いにバベルの塔を築く
最高気温は連日体温を超え
全ての教室にエアコンが入った
快適な学習環境と
熱風地獄と化したグラウンド
明日生きて目覚めるために
毎晩エアコンをかけて悪夢を見る
南極の氷でウイスキーを飲みたいという
父の願いは叶わないだろう
電車内では
マスクとスマホが必須アイテム
顔の見えない相手と戦い交信している
アトムが生まれまもなく二十年
未来を追い越してこの先
どこへ向かっていくのだろう
ぼくはパソコンの電源を落とし
街を離れて
カヤックで緑溶け込む川にこぎ出す
きらめく水面にアユが群れる
刻々と形を変えて雲が流れてゆく
ああ空はこんなにも広い
ぼくは大きく深呼吸をした
編集の都合上、すべて横書きにしています。
注:敬称略
二〇二〇年夏/齋藤 悠一郎
五十年に一度の大雨が今日も降っている川が氾濫しそうだと
人は川沿いにバベルの塔を築く
最高気温は連日体温を超え
全ての教室にエアコンが入った
快適な学習環境と
熱風地獄と化したグラウンド
明日生きて目覚めるために
毎晩エアコンをかけて悪夢を見る
南極の氷でウイスキーを飲みたいという
父の願いは叶わないだろう
電車内では
マスクとスマホが必須アイテム
顔の見えない相手と戦い交信している
アトムが生まれまもなく二十年
未来を追い越してこの先
どこへ向かっていくのだろう
ぼくはパソコンの電源を落とし
街を離れて
カヤックで緑溶け込む川にこぎ出す
きらめく水面にアユが群れる
刻々と形を変えて雲が流れてゆく
ああ空はこんなにも広い
ぼくは大きく深呼吸をした