【特別賞】大切な友人の死/高橋 莉央
更新日:2018年7月9日
受賞作品を、原文のまま掲載します。
編集の都合上、すべて横書きにしています。
注:敬称略
原文はこちら
「鳥が大きな木の上で休む
それを見つめていたら何かを察したように
空へと羽ばたいていった
鳥がいなくなって
残った大きな木を見つめてみると
木は人間を見守っていた
木にヘビが近寄る
木を見ていた人間は声をあげて逃げた
木は逃げないそこでじっとして
木に鳥が戻ってきた今度は多くの鳥が
その中の一匹がヘビを捕まえ飛び立つ
それでも木はじっとしたまま
鳥が木の枝で会話する
大きな木は風にゆれ
鳥の会話をだまって聞いた
大きな木はずっとそこにいた
何年前からいるのかさえ分からないくらい
大きな木はずっと見ていた
鳥もヘビも人間もその他の生き物も
嵐が来て雷が落ち、木は静かに眠った
落雷の瞬間、彼は痛かっただろう
落雷の瞬間、私は辛かったのだから
友人の死を嫌でも見てしまったのだから
どんな物にも生き物にも寿命はある
ただ生きている時間がそれぞれ違うだけで
限られた時間は大切に・・・ただ大切に・・・」
枯れた切り株の横で
大きな大きな木が僕に語った