【審査員奨励賞】鳥よ/石野 美宙
更新日:2018年7月9日
受賞作品を、原文のまま掲載します。
本文に読みがなを〔 〕書きで添え、編集の都合上、すべて横書きにしています。
注:敬称略
原文はこちら
ああ今日はなんて素晴しい日なんだろう
空は秘色
陽は朱く
山は萌黄〔あお〕く
風は優しい
私は一羽の鳥が空高く飛んでいるのを見た
どこへ向かっているのか
大きく羽を広げ
時折忙しく羽ばたきながら
すい―すい―っとどこかへ飛んで行く
たったひとりでどこへ行くのだろう
遠ざかって行く鳥を
私は見守るわけでもなく
私は見送るわけでもなく
私はただ単にその姿を
これからの私を暗示するかのように
私はただ単に見つめていた
ああ鳥よ
たったひとりでどこへ行くのか
その先には一体何が
お前を待ち受けているのか
ひとりで殻を突き破り
決して後ろを振り返ることなく
決して恐れおののかず
決して飛び立つことをやめず
ひとりで羽ばたくことを学んだ
ああ鳥よ
いつの日かお前は私に
オリーブの枝を持って来るだろうか
私は進まねばならない
お前の生き様のように
強く
逞しく
どこか誇らしく
まっすぐに前だけを向いて
在るべき場所へ辿り着くのだ
そしていつの日か再び
私はお前の姿を見るだろう