受賞者からの寄稿を読む 第19回
更新日:2018月7月9日
第18回『白鳥省吾賞』を受賞して/前田新(第18回白鳥省吾賞一般の部 最優秀賞受賞者)
昨春、第十八回『白鳥省吾賞』の栄に浴し改めて、白鳥省吾先生の詩精神と東北人としての気概に共感いたしました。また授賞式に際しましては、栗原市の市長さんをはじめ関係各位の皆様方の行き届いた御配慮と心温まる御歓迎を頂き、終生忘れることの出来ない思い出となりました。厚く御礼と感謝を申し上げます。
私は中学生のころから、担任教師の影響で詩を書き始めました。農業高校を卒業して農家の跡取りとして就農し、昭和三十七年に「日本農民文学会」に入会しました。白鳥先生が会長を務めておられました。誌上に拙い詩を載せて頂きましたが、お会いすることもなく過ぎました。その後、私は詩ではなく小説で第五十一回日本農民文学賞を頂きました。
私の文学活動の原点に白鳥先生の民衆詩派とよばれる詩精神があります。とりわけ東北の視座から民衆の苦悩を哀歓とともに不屈の気概で歌い上げる詩精神は、私はいまこそ高く評価されなければならないと思っています。
グロバーリズムの終焉のあとに、共存の思想に立ったローカリズムが展開される予兆が、いま、世界的な規模で起きています。すでに詩の世界では、3・11以後の新しいパラダイムの方向性として顕在化しつつありますが、それはわれら東北人の縄文的世界観に通底します。
その拠点こそ、白鳥省吾先生を顕彰する栗原市の白鳥省吾記念館であり、その賞であります。私は白鳥先生の名を冠した賞を受賞しましたことに誇りを感じています。最晩年にはなりましたが賞に恥じない詩作品のために研鑽を積み、晩節を全うしたいと念じています。
最後になりましたが、白鳥省吾賞の益々の御隆盛と栗原市の御発展、並びに関係各位の皆様の一層の御健勝を御祈りいたします。