第20回一般の部最優秀賞受賞者寄稿を読む
更新日:2020年2月25日
千年桜に寄せて/みうら ひろこ(第20回一般の部最優秀賞受賞者)
東日本大震災による福島第1原子力発電所の事故で、私は浪江町から同じ県内の相馬市に“原発避難”をして九年になります。
避難して一年目、私と共に詩を書いている夫(根本昌幸)が、白鳥省吾賞の優秀賞を受賞いたしました。避難生活で体調を崩した夫の代理で、私が記念館での授賞式に出席させていただき、その時私も自分の作品で、この場所に戻ってきたいと強く思いました。
毎年応募を続けてきました。やっと八年目にして、「千年桜」が最優秀賞をいただく事が出来たわけです。
私は原発事故で、故郷喪失し、避難者となった苦しみや悔しさを、どうしても作品の中に吐露する表現があることは已むを得ないと思います。私にとって原発事故は”現在進行形”でもあります。
ある時、福島県内の三春町に歴史の勉強に行く機会がありました。三春町は日本三大桜と呼ばれる「滝桜」の町でもあります。
三春町のどの店や施設にも、ポスターや写真が飾ってあるのを見て、滝桜に寄せる愛着や誇りというのを感じてきました。千年前、人の手によって植えられた桜の若木は、幾多の戦火や災害をくぐりぬけ、千年後も観る人々を勇気づけ癒やしてくれるその大きな存在を考えたとき、桜の樹自身の立場で詩(うた)ってみてはどうだろうと、少し視点を変えてみました。次々にフレーズが浮び、規定の四十行に削ったり、まとめるのに苦心して「千年桜」は完成しました。
いつの時代にも、苦しみや哀しみがあったのフレーズの中に、東日本大震災による原発避難者となった私の気持をこめました。審査員の先生方に、そこを受け止めていただく事が出来、嬉しい受賞となりました。
いまも私は、原発事故のことを詩(うた)い続けて作品を発表しております。風化はさせません。千年後にもこの事故のことは残さなければならないと思っております。