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一般(高校生以上)の部【優秀賞】阿賀野川・晩夏/南雲 和代

更新日:2020年1月24日

受賞作品を、原文のまま掲載します。
本文に読みがなを( )書きで添え、編集の都合上、すべて横書きにしています。
注:敬称略

阿賀野川・晩夏/南雲   和代

新潟の遅い夏は雪よりも白い雲で
空と海の境界を分岐し青と蒼に染め変える
遠い昔、裏切りだけを教えた他人(ひと)と
夏を過ごした街は緩やかに老い続けていた

阿賀野湾と呼ばれる緩やかな河口を遡ると
夏の残した濃い緑の木々を水面に映して
上流の狭隘な渓谷にたどり着く
静謐な秋の訪れの時の彼方に隠蔽されるよう
に建設された鹿瀬工場
誰の目にも可視化されないように
近代化の衣を被っていた巨大な工場群
高度成長に三千人の工場労働者を抱えた街は
すべてを備えた魔法の箱の奥底に多量の毒を
隠していた
工場は村落に富をもたらし代償のように第二
水俣病を発症させた
新潟の地から遠い南国の熊本の公害認定から、
十年間の歳月を多くの関係者が目を瞑った
工場の排水口はメチル水銀を阿賀野川に
垂れ流し続けた

豊かな漁場だった阿賀野川
今もハヤの体内で測定されているメチル水銀
ハヤとヒトのどちらが発症しやすかったのか
誰も語らない
残酷な楼閣が与えた富は今でも加害者の責任
を曖昧にしている
地域の誰もが責めようとしない加害者と
事実を言えない被害者の捻じれた関係の中を
長い歳月は過ぎていった

若い穂先を夏風に揺らす薄の芦原に横たわっ
ている鹿瀬工場の残骸
新潟の遅い夏も私の想いも終わろうとしてい


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