一般(高校生以上)の部【優秀賞】海を背負う/木村 孝夫
更新日:2020年1月24日
受賞作品を、原文のまま掲載します。
編集の都合上、すべて横書きにしています。
注:敬称略
すぅっと入ってくるものがある
今は、無色の時間だ
言葉を探しているが見つからない
防潮堤の一番下で
骨になる臭いがしている
二〇一一年三月十一日を
忘れてはならない
老いても杖のように側に置いて
あの日に知った
神様のいない場所があることを
月命日には
両の手で海を抱く
その海の背後で浮遊しているものが
手からこぼれ落ちてくる
あの日から生の存在を探してきたが
未だに見つからない
海を抱くと、苛立つものに
鼓動が速くなる
防潮堤は大きな墓石のようだ
魂が、波打ち際で
手を振っているのだろうか?
目には見えないのだが
背中から
いっときなのだが
すぅっと入ってくるものがある
この時、私は
海を背負っているのかも知れない
編集の都合上、すべて横書きにしています。
注:敬称略
海を背負う/木村 孝夫
背中からすぅっと入ってくるものがある
今は、無色の時間だ
言葉を探しているが見つからない
防潮堤の一番下で
骨になる臭いがしている
二〇一一年三月十一日を
忘れてはならない
老いても杖のように側に置いて
あの日に知った
神様のいない場所があることを
月命日には
両の手で海を抱く
その海の背後で浮遊しているものが
手からこぼれ落ちてくる
あの日から生の存在を探してきたが
未だに見つからない
海を抱くと、苛立つものに
鼓動が速くなる
防潮堤は大きな墓石のようだ
魂が、波打ち際で
手を振っているのだろうか?
目には見えないのだが
背中から
いっときなのだが
すぅっと入ってくるものがある
この時、私は
海を背負っているのかも知れない