2ページ 【特集】ピアノ調律師が紡ぐ音の世界  美しい音色と豊かな響きで、私たちを魅了するピアノ。  その魅力的な音を奏でるためには、人の手による精密な調律作業が欠かせません。  今回は、ピアノの音色を守る人、ピアノ調律師について紹介します。 ピアノの誕生  ピアノの原型は、18世紀のイタリア、チェンバロ製作家のバルトロメオ・クリストフォリの手によって誕生しました。  当時の鍵盤(けんばん)楽器の主流は、チェンバロというピアノによく似た形のものでした。チェンバロは、弦をはじいて音を出すという仕組みで、音に強弱をつけにくいという性質があります。  クリストフォリは、この性質を克服し、鍵を押す力の強さで音の強弱をつけられるようにするため、ハンマー仕掛けで弦を打って音を鳴らすという、現在のピアノにつながる仕組みを発明しました。  その後、ピアノ音楽の発達とともに鍵(けん)の数や弦の素材などに改良が重ねられ、私たちが耳にするピアノの音が完成しました。 楽器の王様  ピアノの鍵の数は全部で88鍵あり、その音域の広さは、オーケストラで使用される楽器全てを網羅できるといわれるほどです。  また、一つの音だけでなく、複数の音を同時に鳴らすことができるため、音色を重ねた豊かな表現ができるという特徴も兼ね備えています。これにより、主旋律を弾きながら伴奏も同時に弾くことができるという、ピアノならではの演奏も行えます。  このように、ピアノは多彩な特徴を持っているため、楽器の王様と呼ばれています。 調律の専門家  ピアノをはじめ、ほとんどの楽器は使用していくうちに音程や音色などが乱れてしまいます。そのため、定期的に音を整える調律という作業が必要です。  多くの楽器は、演奏者自身が調律を行いますが、ピアノは繊細かつ複雑な構造になっているため、演奏者自身が調律を行うことが難しい楽器です。  こうした理由から、ピアノに関する専門的な知識と技術を持ち、調律や保守、修理などを行ってピアノの音色を守る、ピアノ調律師がいます。 【参考文献】PHP研究所「音楽がたのしくなる世界の「楽器」絵事典 歴史から、音の出るしくみまで」、株式会社ポプラ社「演奏者が魅力を紹介!楽器ビジュアル図鑑1弦楽器・鍵盤楽器バイオリン ピアノほか」、株式会社日本実業出版社「〈カラー図解〉楽器のしくみ」 3ページ 【特集】ピアノ調律師が紡ぐ音の世界 クローズアップ グランドピアノ 弦  鋼鉄製の線。高音部はワイヤーの裸線のみですが、低音部は裸線に銅線を巻き付けています。  また、高音になるにつれ、1音当たりの弦の数は増えていきます。  低音1弦  中音2弦  高音3弦 響板  弦の振動を響かせて豊かな音を出します。 駒  弦の振動を響板に伝えるための部分。 ハンマーとダンパー  どちらもフェルト製。ハンマーは、弦を打つ役割があり、ダンパーは、弾いていない弦が振動しないように抑える役割があります。  白い部分:ハンマー  黒い部分:ダンパー チューニングピン  弦を巻き付けている部分。ピアノ調律師は、チューニングハンマーという専用の器具でこの部分を締めたり緩めたりして、音色を調整します。  ▲チューニングピン  ▲チューニングハンマー 鍵盤  鍵が集まっている部分。グランドピアノの鍵の数は、黒鍵が36、白鍵が52の、全部で88鍵です。左に行くほど低い音になり、右に行くほど高い音になります。 ペダル  音の響きを変えるときに、踏んで使用する部分。  右:ダンパー 響きが持続し、豊かに広げることができます。  中央:ソヌテヌート 響かせたい音を、集中的に響かせることができます。  左:シフト 音量が減り、音色が微かにソフトになります。 音の出る仕組み  グランドピアノは、鍵を押すと、内部でダンパーが上がって弦から離れます。それと同時にハンマーが上がって、弦を打ちます。その時に生じた振動を、駒が響板に伝えることによってピアノ全体に響き、大きな音になります。