4ページ  栗原中央病院院長の中鉢先生と、内科医長の三田先生に、病院の働き方改革について話を伺いました。 栗原中央病院 院長 中鉢 誠司(ちゅうばち せいじ)先生 勤務体制の課題  医師の勤務形態の一つに当直というものがあります。当直とは、医師が交代で、夜間における救急患者の対応などの通常診察時間外業務を担当することです。  日中の診察に加えて当直をこなすため、翌日は休息を取ることを基本としていますが、診察を待っている人が多いときは、業務を続けるということも少なくありません。全国の病院でも同様の傾向が見られ、働き方改革における課題だといわれています。  こうした働き方が続くと、寝不足や疲労による判断力の低下を招きます。また、健康上の理由から退職する医師も出てきてしまいます。  現在の市立病院は、常勤医のほか、大学病院などから医師の応援をもらって何とか医療体制を維持しています。  しかし、労働環境の悪化によって医師離れが進んでしまうと、これまで通りの医療体制が維持できなくなり、市民の皆さんの健康を守ることが困難になってしまいます。 働き方改革に向けて  栗原中央病院では、当直を行った日の午後に休息時間を取れるよう、病院内で調整しています。  また、診療科ごとに当番医を決め、当直医では対応できない症状などがあれば、当番医に応援を求められる体制を整備し、急な出勤があった際は、振替休暇を取得できるように調整しています。  国が実施する働き方改革では、勤務間に休息を設けることが必要になります。医師の健康を守るためにも、こうした取り組みはこれまで以上に力を入れていきたいです。 医師の健康を守り、医療を守る  働き方改革を行ったとしても、地域の医療や救急を守るという病院の役割に変わりはありません。  現在の医療体制を維持しつつ医師の健康を守り、万全の状態で診察などを行える環境を作ることが、安心して受診できる病院へとつながっていきます。  働き方改革には、市民の皆さんの協力が必要不可欠です。早めに病院を受診することや、休日や時間外で主治医が不在の場合は、同じ診療科に在籍するほかの医師を受診することなどを、日頃から心掛けていただきたいです。 栗原中央病院 内科医長 三田 貴士(みた たかし)先生 医療を地域に還元  働き方改革が進み、今よりもゆとりが持てるようになったら、医療知識の修得はもちろんのこと、病院外の活動にも力を入れたいと考えています。  これまで私は、子どもの食や生活習慣病に関する専門的な勉強をしてきました。栗原市に来てからは、将来を担う子どもたちに食と健康の関わりを知ってもらうため、何度か学校で出前講座をしました。  病院を受診する人以外にも、医療や健康に関する知識を必要としている人はいると思います。私が学んできた知識を地域に還元するためには、自ら病院外に出て行くことが大切だと考えています。  地域に根差した病院だからこそ、市民の皆さんにとって身近な存在でありたいです。 受診場所が変わっても  病状が落ち着いている患者さんには、自宅近くの病院や開業医への紹介をお願いすることがありますが、これは決して、市立病院と縁が切れるということではありません。  普段は近くの医療機関で、より専門的な治療や重症な場合は大きな病院で、という病院ごとの役割分担があります。皆さんには、この役割分担への理解をお願いしたいです。もちろん、急病や困ったことがあったらいつでも連絡してほしいと思います。地域の医療機関と市立病院が連携して、皆さんの健康を守ります。 5ページ 【特集】医師の働き方改革~患者と医師の笑顔のために~ みんなで守ろう、くりはらの医療  医師の働き方改革を後押しするためにできることは、私たちの日頃の行動の中にもあります。  病院受診時に押さえておきたいポイントなどについて紹介します。 かかりつけ医のすすめ □健康管理の心強い味方   かかりつけ医は、家族みんなの健康管理人で、体に関することをなんでも相談できる心強い存在です。 □かかりつけ医を持つことのメリット  1.日頃の状態をよく知っているため、わずかな体調の変化に気付いてもらいやすい。  2.家族の健康についても相談しやすい。  3.より高度な検査や手術、入院が必要な場合に適切な医療機関を紹介してくれる。 □症状が軽い場合はかかりつけ医を受診   症状の軽い人が救急医療や高度専門医療などを行う病院に押し寄せると、症状の重い人が必要な医療を受けられなくなる恐れがあります。   多くの市民の命と健康を守るためにも、まずは、かかりつけ医を受診しましょう。 受診のポイント □早めの受診を心掛ける   痛みなどを我慢して受診が遅くなると、症状の悪化を招きます。症状が軽いうちに受診しましょう。 □持ち物をしっかり準備   健康保険証や診察券、お薬手帳などを忘れずに持参しましょう。 □伝えたいことを事前にメモ   医師に伝えたいことを事前にまとめ、メモをしておきましょう。   受診時の聞き漏らし防止や、受診時間の短縮につなげることができます。  例えば・・・  ・気になる症状は何か、いつからか  ・大きな病気にかかったことはあるか  ・薬や食べ物にアレルギーはあるか  ・家族に同じような症状があるか 病院?救急車?判断に迷ったときは  夜間や休日の急な病気やけがで、救急車を呼んだ方が良いのか迷ったときのための、専用相談ダイヤルがあります。この電話相談は、看護師などの医療関係者が症状について相談に応じるほか、対処方法の助言、医療機関の案内などを行っています。 おとな救急電話相談 ●受付時間  月曜日~金曜日:午後7時~翌午前8時まで  土曜日:午後2時~翌午前8時まで  日・終日:24時間 ●電話番号  【プッシュ回線、携帯電話】#7119  【プッシュ回線以外】022-706-7119 こども夜間安心コール ★対象:15歳未満 ★受付時間:午後7時~翌午前8時まで ★電話番号  【プッシュ回線、携帯電話】#8000  【プッシュ回線以外】022-212-9390 ※この電話は、相談と助言を目的とするものです。緊急・重症の場合は迷わず119番通報してください。 医療と笑顔を未来につなぐ  病気やけがで病院を受診したとき、患者の不安や悲しみに寄り添い、医療の知識や技術、いたわりの心で、私たちの心身を癒す手助けをしてくれる医師たち。一人でも多くの命と健康を守りたいという強い使命感を胸に、日夜努力を続けています。  医師の働き方改革が始まる今、地域の医療を守るために私たちができることは何かを考え、行動を見直していくことが必要になってきています。  病院のかかり方を工夫したり、日頃の生活習慣を整えたりといった、市民一人一人の小さな心掛けが、これからも安心して医療を受けられる環境づくりの大きな支えになります。まずは、できることから少しずつ取り組んでいきましょう。  自分自身や家族、大切な人、未来を生きる子どもたちが、いつでも医療を受けられる栗原であり続けるために。そして、医療に関わる全ての人たちが、笑顔でいられるように。