2ページ 【特集】防災・減災に向けて  これから秋口にかけて、豪雨や台風による災害が発生する可能性が高くなる時季です。  今回は、いつ起きてもおかしくない自然災害に対して、防災・減災のために取り組むべきことを確認してみます。 写真 ▲令和4年7月の大雨で増水した小山田川によって水没した道路 近年の自然災害の状況  近年、地球温暖化などの影響により、世界的に自然災害の激甚化・頻発化が叫ばれています。  気象庁の地域気象観測システム(アメダス)の観測では、全国で1時間降水量50ミリメートル以上の短時間強雨が発生した頻度や、1日の降水量が200ミリメートル以上の大雨を観測した日数は、1976年以降の統計期間で増加傾向にあります。1976年から1985年までの10年間と、2013年から2022年までの10年間で比較すると、約1・5倍増加しています。  平成27年9月関東東北豪雨や令和元年東日本台風などは、日本各地で災害を引き起こし、市内も大きな被害を受けています。また、令和4年7月の大雨では、迫川や小山田川などが避難判断水位に達し、各地域に避難指示や高齢者等避難が発令された他、市道や農道、水路など、800件以上の被害が発生しました。  今後も地球温暖化の傾向が続いた場合、自然災害のさらなる激甚化・頻発化が予測されています。 ●全国の1時間降水量50ミリメートル以上の年間発生回数 1976年~1985年(平均)226回→2013年~2022年(平均)328回 約1.5倍 ●全国の日降水量200ミリメートル以上の年間日数 1976年~1985年(平均)160日→2013年~2022年(平均)239日 約1.5倍 ※気象庁ウェブサイト「大雨や猛暑(極端気象)のこれまでの変化」を基に作成 3ページ 【特集】防災・減災に向けて  増加傾向にある自然災害に対し、地域ではどのような取り組みを行っているのか。瀬峰地区下田自主防災本部の佐々木本部長にお話を伺いました。 瀬峰地区下田自主防災本部 本部長 佐々木 栄(ささき さかえ)さん 地区独自の防災マップ  下田地区では、令和2年に瀬峰地区下田自主防災本部を立ち上げました。それに伴い、市社会福祉協議会の福祉防災まっぷ作成事業を活用して下田地区独自の福祉防災マップを作成し、各世帯に配布しています。  マップには、浸水や地盤に心配がある範囲、水の流れ、ブロック塀がある場所を示している他、各世帯の許可を得て、声掛けが必要な世帯や区長、民生委員の世帯も分かるようにしています。  マップを見るだけで、避難行動をイメージすることができます。 安否確認訓練の実施  防災本部では、防災避難訓練とは別に、安否確認訓練を毎年5月に実施しています。  この訓練では、本部内に設置した安否確認行動チームが主となり、地区内を4つのブロックに分けて巡回します。  各世帯には、無事で自宅に居ることを示す黄色のタオルか、すでに避難していることを示す白色のタオルを、道路から見える所に掲げるようお願いしています。こうすることで、安否確認が速やかに行えるのと同時に、どのタオルも掲げられていない世帯は、緊迫した状況にあるかもしれないことが分かるという仕組みです。  訓練のかいもあり、昨年3月の地震や7月の大雨の際は、おおむね順調に安否確認をすることができました。防災本部で見回りに来ることが、地区の皆さんにも浸透してきたと感じています。 地域ぐるみの防災・減災  地域の介護施設から声を掛けていただき、車いすなどの介助が必要な人は、介護施設へ避難させるよう協力体制を結び、避難訓練も合同で行っています。  介助が必要な人は、通常の避難所だと、設備面などの関係でその後の避難生活が不便かもしれません。そのため、専門の知識と設備が整っている介護施設に避難した方が、安心できることでしょう。  地域の介護施設と連携した取り組みが、他の地域にも広がっていけばいいと思います。  また、安否確認の際、隣の家の人からも声を掛けてもらえて、とても安心したという声を聞きました。高齢者だけの世帯や独居世帯が増えている中、隣近所が互いを気に掛け、有事の際は声を掛け合い一緒に避難をする関係性が、大切だと考えています。  普段から顔を合わせたらあいさつするなど、小さなことでもいいので、近所同士で交流することが、地域全体の防災・減災につながっていくのではないでしょうか。私たちも、訓練や行事などを通じて、地域の交流を増やしていきたいと考えています。 写真 ▲訓練開始前の打ち合わせ ▲声掛けが必要な世帯への訪問