4ページ  日本循環器学会認定循環器専門医、日本内科学会総合内科専門医・指導医・認定医である、栗原中央病院の矢作先生に、血圧について伺いました。 栗原中央病院循環器内科部長 矢作 浩一(やはぎ ひろかず)先生 血圧悪化の症状  普段の血圧の変動に症状はありません。頭痛や胸痛、発熱など、何かしらの兆しがある病気とは違い、測定を行い高い数値が出たときには、すでに、脳や心臓、腎臓、血管などに、何らかの障害が発生していることがほとんどです。 高血圧の治療  血圧が高い状態を放置すると、心不全や心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脳内出血、大動脈解離などを引き起こします。それらを未然に防ぐため、日ごろの血圧測定が大切になります。  私たち循環器内科医は、患者さんの心臓を診る傍ら、高血圧が原因と考えられる場合、普段と変わらない生活を過ごしていただきながら、24時間血圧を測定するABPM検査を行っております。  目が覚めると、心臓や血管の働きを促進する交感神経が賦活化(ふかつか)して、血圧が急激に上昇する「モーニング・サージ」という現象が、脳心血管疾患の発症に関連すると言われています。この検査で、そういう現象がないか、一日中血圧が高いのか、夜間だけ高いのかを調べ、その検査結果で診療方針を決めております。 高血圧の若年化  高血圧は高齢者というイメージがありますが、私が県北で働くようになって20年、最近では30代から40代の、比較的若い年代の高血圧患者が増えているのが現状です。  これには、食生活が大きく関わっていると言えます。米中心だった食生活が、小麦や塩分過多となるファストフードを多く口にするようになっているからです。また、投薬治療を行っている患者さんの中には、症状が落ち着いてくると、自己中断してしまう人がいます。このような患者さんは、必ずと言ってよいほど病気が再発しています。高血圧をきちんと治療しないと、体全体に障害を及ぼしていくことを、理解いただくようお話しをしています。 血圧測定のススメ  家庭血圧は、朝晩2回測っていただきたいのですが、血圧を測っていても、ただ測って終了の人がいます。測りっぱなしではなく、きちんと記録しておくことが重要です。病院で血圧を測るだけにとどまらず、普段の血圧を知ることで、診療方針の一助となります。  近頃では、腕時計などのデジタル機器で、自動的に脈拍や血圧を定期的に測り、記録してくれるものもあります。測る手間や記録が苦手な人には、予防観点で、有効な手段の一つかと思います。 ヒートショックに要注意  血圧は少々高くても、一定に保つことが重要です。これからの季節は、寒暖差に気を付けなければなりません。温かいところから寒いところに出れば、一気に血圧は上昇し、上が180を超えたりすることがあります。  特に、入浴時は気を付けていただきたいです。日本人は、湯船に浸かる習慣がありますが、寒いとお湯の温度を高くしがちになります。熱い湯に入れば、血圧が上がり、脳に負担がかかります。また、熱い湯から上がり、熱が冷めてくると、上がった血圧が下がり、今度は心臓に負担がかかります。  お風呂に入る前は、水分をとり、温度は39度か40度程度で、長湯をしないようにしてください。間違ってもアルコールを摂取してから入るのは、やめてください。また、薬を服用している人は、薬を飲んでから1時間以上空けて、入るように心掛けてください。皆さんの大切な心臓と脳を守るために。 足回し体操 朝の起床時など、起き上がらずにそのままあおむけでできる体操を紹介します。 両足をやらず、血圧が高い人は、左足。血圧が低い人は右足をやると効果的です。 ①布団の上などに寝そべる ②足先を反らして、足首を良く伸ばす。10回程度繰り返す ③かかとを付けたまま、足先をぐるぐる回す。左回り、右回り両方を合計2分程度回す ④かかとを10センチメートルぐらい浮かせて、約5秒そのまま保つ ⑤④の位置からすとんと足を布団に落とす。勢いをつけると打ち付けるので注意する 5ページ 【特集】知っているようで知らない血圧 血圧の正しい測り方 血圧計について ・上腕測定タイプ ・上腕挿入タイプ  心臓に近い位置で測定することができ、より正確な数値がでます。 ・手首測定タイプ  腕で測るタイプに比べて、心臓から離れた位置で測定するため、数値は目安として利用できます。 知っているようで知らない測定のコツ いつ?→1日2回(朝・夜)、毎日一定の時間に行う どこで?→静かで、過ごしやすい温度の部屋で 測る前は?→たばこを吸わない、飲酒しない、カフェインを取らない どのように?→薄手のシャツなら1枚着たままでもよい。椅子に座って、手のひらを上に向けてくつろいで、話をしないで1、2分安静にしてから、測定位置は心臓と同じ高さで測定 測った後はどうする?→結果を必ず記録する 朝 ・起床後、1時間以内 ・トイレに行ったあと ・朝食の前 ・薬を飲む前 夜 ・寝る直前 ・入浴や飲酒の直後は避ける 姿勢 椅子に座り背筋を伸ばす(前かがみや腹部を圧迫しない) 高さ 腕帯と心臓の位置を同じ高さに 安静 体の力を抜き少し安静にしてから 測定中は 体や腕を動かさない 測定した結果を見てみましょう! 成人における血圧値(単位:ミリメートル・エイチ・ジー) 分類 家庭血圧・収縮期(上) 家庭血圧・拡張期(下) 診察室血圧・収縮期(上) 診察室血圧・拡張期(下) 正常血圧 115未満 75未満 120未満 80未満 正常高値血圧 115以上 75未満 120以上 80未満 高値血圧 125以上 75以上 130以上 80以上 高血圧(Ⅰ度) 135以上 85以上 140以上 90以上 高血圧(Ⅱ度) 145以上 90以上 160以上 100以上 高血圧(Ⅲ度) 160以上 100以上 180以上 110以上 参考:厚生労働省生活習慣予防のための健康情報サイト チャレンジ!血圧測定  知っているようで、意外と知らない血圧。血圧は、自分で健康を保つための指標であり、安定した数値を保つには、日頃からの生活習慣が、とても重要になります。  健やかに過ごすために必要な事。それが、塩分を控えたバランスの良い食事と適度な運動であることは分かっていても、実践できない人が多いのではないでしょうか。毎日を過ごすことに精いっぱいで、気付くと1日、1週間、1カ月が過ぎ去り、年に一度の健診で、ため息をついている人もいるのではないでしょうか。  自身の生活習慣を振り返ることは大切です。自分の体の状態を過信せず、じっくり知ることで、未然に防げる病気があります。胸が高鳴る年末年始、暴飲暴食や夜更かしに気を付け、大切な人と、輝かしく希望に満ちた年明けを迎えられるように、まずは1日2回、血圧を測ることから挑戦してみましょう。