2ページ 【特集】絵手紙に思いを込めて  手紙いっぱいに広がる、味のある筆遣いで書かれた絵と言葉。  手書きならではの温かみにあふれた絵手紙は、受け取った人の心を和ませてくれます。  今月は、芸術の秋にぴったりの絵手紙について、紹介します。 絵手紙の始まり  手紙に絵を添えて相手に送る文化は、古くからありましたが、現在のような絵手紙の形になったのは、昭和53年のことです。絵手紙作家の小池 邦夫(こいけ くにお)さんが、雑誌の企画で6万枚の絵手紙を発表したのがきっかけでした。その後絵手紙は、絵が苦手な人でも親しめる趣味として全国に広まっていきました。  現在では、地域のサークル活動や生涯学習の他、福祉活動などに取り入れられ、子どもから高齢者まで幅広い年代が筆をとっています。たとえ技術的に上手でなくても、一生懸命書いたものには、上手を超える魅力があるという、小池さんの思いから生まれた「ヘタでいい ヘタがいい」の合言葉は、絵手紙を書く人の指針になっています。 日常の中にある題材  絵手紙は、身近なものを題材に、短時間で絵を描き、短い言葉を添えて、身近な人に出す、身近主義といわれています。珍しいものや特別なものを書く必要は無く、道端に咲いている花や、家から見える景色、飼っているペットが遊んでいる様子など、日常の中で感動したことを、そのまま手紙に描きます。  普段から見慣れているものでも、季節や天気、自分の気持ちの状態によって見え方が違うこともあるため、まずは、しっかりと題材を観察することが大切です。 自分らしく書く  絵の描き方や塗り方、使用する道具に決まった形式はなく、思いのままに書くことができるのが、絵手紙の魅力の一つです。絵筆や鉛筆、万年筆、クレヨン、割りばしなど、表現したいものに合わせて道具を変えたり、はがきを数枚組み合わせて大作を描くこともできます。  絵手紙に、失敗作はありません。「書きたい」という自分の気持ちと、相手を思う気持ちを込めて書かれたものは、どれもかけがえのない作品になります。失敗したと思う部分も、自分らしさの一つとして表現することができるのです。 参考文献:小池 邦夫・小池 恭子「新版 はじめての絵手紙百科」、日本絵手紙協会公式教本「絵手紙をかこう」 3ページ 【特集】絵手紙に思いを込めて  若柳で活動している、絵手紙教室「秋桜(こすもす)会」の、菊地さんと浅野さんに話を伺いました。 菊地 さつ子(きくち さつこ)さん(若柳荒町) 絵手紙との出会い  私の家は農家をしているので、田畑の仕事の合間にできる趣味を見つけたいと思っていました。そんなときに出会ったのが、絵手紙です。小学生のころ、先生に絵を褒められたことが記憶に残っていて、絵を描くことも好きだったので、やってみようという気持ちになりました。  実際に書いてみると、その奥深さに驚きました。筆の持ち方や線の引き方、色の塗り方など、絵手紙ならではの手法があり、最初は難しく感じていましたが、何枚も書いていくうちに、だんだんと書けるようになっていきました。 書くことの楽しさ  老人ホームや地域の集まりで絵手紙を教えたことがありますが、最初はみんな「自分は絵が苦手だから、絵手紙は書けない」と言っていました。そんなときは「まずは書いてみよう」と声を掛けています。絵の上手さを気にするよりも、絵手紙を書くことの楽しさをみんなに知ってもらいたいからです。気持ちを込めて書けば、下手でもいいんだよ、ということが伝わっているとうれしいです。 相手を思う気持ち  これまで書いた絵手紙の中で、特に思い出に残っているのは、孫が遠方に嫁いだときに送ったものです。  二つのおきあがりこぼしが寄り添っている絵に、新婚の二人の末永い幸せを願った言葉を添えました。孫はとても喜んでくれたようで、絵手紙をおしゅうとめさんにも見てもらったそうです。その話を聞いたとき、私の心も温かくなったのを覚えています。  絵手紙を書いていると、送る相手への親近感が自然と湧いてきます。それは、相手の日々の生活や、元気に過ごしているかということに思いを寄せ、この人のために絵手紙を書きたい、という気持ちから生まれてくるものだと思います。  これからも、相手を思う気持ちを大切にしながら、絵手紙を書き続けていきたいです。 浅野 久惠(あさの ひさえ)さん(若柳元町2) 仲間との大切な時間  ある日、テレビで放送されていた絵手紙の番組を見たことが、私が絵手紙を始めたきっかけでした。絵や字を書くことがあまり得意ではありませんでしたが「はがきの大きさなら書けるかも」と思い、最初は一人で始めました。  今では、仲間と一緒に絵手紙を書くことができ、とても充実しています。みんなで世間話をしたり、お互いの作品の良いところを伝え合いながら絵手紙を書くこの時間が、何よりの楽しみです。 「ありがとう」を励みに  介護施設に入所したり、病気で入院した知人には、体調を気遣う言葉を添えて、絵手紙を送ることもあります。部屋や枕元に飾っていると聞いたときは、私の気持ちが相手にも伝わっていると感じ、とてもうれしくなりました。  絵手紙を送った相手から「ありがとう」の一言をもらうと、今まで書き続けてよかったと思いますし、何よりの励みになります。