2ページ 【特集】人生の物語を話し合おう  人生の物語。それは、自分のこれまでの歩みを振り返ると共に、大きな病気やけがをした時のことも含めて、これから自分がどう生きていきたいのか考えて、描くものです。  今月は、これまでの歩みを見つめ返し、これからの生き方を考えるための取り組みについて紹介します。 もしものときに備えて  人は、誰しも命に関わる大きな病気やけがをする可能性があります。命の危険が迫った状態では、約70パーセントの人が、今後の医療やケアの進め方を自分で決めたり、人に望みを伝えることができなくなるといわれています。そのような状態であっても、本人の希望を叶えながら医療やケアを進める仕組みづくりは必要です。  厚生労働省では、もしものときの医療やケアについて、家族や周囲の人、医療・介護従事者などと、あらかじめ繰り返し考えて話し合う取り組みに「人生会議」という愛称を付け、普及・啓発活動を行っています。  いつまでも自分らしく、希望どおりに生きていくため、周囲の信頼する人たちと話し合い、自分の考えを共有しておくことが大切です。 意思を伝えるノート  人生会議をする上で役立つのが、これまでの出来事や思い出、今後への考えについて書き留めた、エンディングノートです。文章にすることで、考えが整理しやすくなり、自分で意思表示できなくなったときには、自身に代わって、周囲に意思を伝える手段となります。  市は、令和3年7月に市民のためのエンディングノート作成を目指し「栗原市版エンディングノートを一緒に作る会」を開催しました。この会には、市民にとってどんな内容や項目が必要なのか協議するため、市在宅医療・介護連携支援センターが中心となり、市民や医師、看護師、ケアマネジャー、救急隊員など、さまざまな立場の人が参加しました。  協議を重ねて完成した、栗原市版エンディングノート「マイストーリー」は、少しでも自身の考えが整理しやすくなるよう、医療用語に関する解説文を入れ、体の状態ごとにどのような医療やケアを望むのか、項目ごとに選べるようになっています。 3ページ 【特集】人生の物語を話し合おう  エンディングノート講座で講師を務める、市在宅医療・介護連携支援センターの千葉所長に話を伺いました。 栗原市在宅医療・介護連携支援センター 所長 千葉 由美子(ちば ゆみこ)さん 明るく前向きな印象を  エンディングノートは、これからも自分らしく生きていくために、自身の考えや希望を書き残すものです。ただ、もしものときの医療やケアについても触れることから、死に支度のために書くものだと避ける人もいます。  エンディングノートは、一度書いて終わりではありません。日々の生活の中で、書ける内容から書き足したり、考え方の変化に伴い書き直したりするものです。引き出しの奥にしまい込むのではなく、普段から手に取ってほしいと思っています。  私は、エンディングノートとは、人生の最期について書く暗いものではなく、これまでの出来事や思い出と、これから望む生き方について書き残し、家族や親族、友人など大切な人へ思いを伝える、明るくて前向きなノートだと考えています。皆さんにも暗い印象を払拭してもらえるよう、在宅センターではエンディングノート講座を行っています。  講座では、自分のこれからを考え、書き残すとはどういうことなのか、笑いを交えながら、明るく楽しく話すように心掛けています。 話し合うことの大切さ  長年看護師として働いてきた私は、意思表示できなくなった患者さんが望む医療や、ケアは何なのかと、周囲の人たちが悩んでいる場面をたくさん見てきました。  残された人たちの不安を和らげ、本人の意思を尊重しながら医療やケアを進めるためにも、もしものときを迎える前に行う人生会議は、大切な取り組みだと感じています。  人生会議も、エンディングノートと同様に明るくて前向きなものだと、私は考えています。医療やケアのことだけを話すのではなく、こんなことをしてみたい、思い出の場所にまた行ってみたいなど、これからを明るく楽しく生きるための企画会議となるのが、一番の理想形だと思います。 人生会議の傍らに  人生会議といっても、何を考え、どう話し合えばいいのか、すぐには想像しづらいと思います。その時に参考となるのが、私たちの講座で配布しているエンディングノート「マイストーリー」です。  このノートには、今後の医療やケアのことを書くページに加え、これまでの人生を振り返ったり、栗原の好きなところを書くコーナーがあります。また、各種手続きの窓口一覧も載っているので、普段から手に取りやすいノートとして、皆さんの今後の生活や、人生会議の場で役立つことを願っています。  自分と周囲の人、互いがこれからも前向きに生きていくため、マイストーリーを開き、思い出話などをしながら、明るく人生会議をしてみてほしいです。 栗原市在宅医療・介護連携支援センター  在宅センターは、栗原中央病院内にあります。  市民の皆さんが、いつまでも安心して住み慣れた地域で暮らせるよう、在宅医療・介護に関する情報発信や支援を行っています。  医療と介護について分からないことは、ぜひ、相談してください。 エンディングノート講座  市民の皆さんへの情報発信の一環として、エンディングノート講座を開催しています。  自分のこれまでの人生と、これからの生き方について、マイストーリーを書き、大切な人に伝えてみませんか。 ●対象  □2人以上の集会や団体  □家族、友人、近所の人など個人的な集い  ※年齢は問いません。 ●申し込み 開催希望日の2カ月前までに、電話または、Eメールで申し込みください。  ※開催日時は、要相談  ※受け付けは、土・日曜日、祝日を除く午前9時から午後4時まで 問い合わせ先  栗原市在宅医療・介護連携支援センター  電話21-5357  Eメール zaitaku@kam.or.jp