4ページ  地域の味、家庭の味を伝えていくことについて、みやぎ食育コーディネーターとして郷土料理や行事食など、食育に関する支援を行っている、栗原南中学校の菅原教諭に話を伺いました。 みやぎ食育コーディネーター 栗原南中学校 菅原 美香(すがわら みか)教諭 郷土の味を伝える  私が郷土料理を伝えたいと考えるようになったのは、亡くなった祖母が作ってくれた料理が影響しています。祖母は、食べさせたい気持ちが強い人で、家での食事をとても大切にしていました。そんな祖母は、こんにゃくや豆腐を材料から手作りしたり、お餅やおはぎ、団子、蒸しパンなど、たくさんの料理やお菓子を作ってくれたりしました。栗原に伝わる伝統の料理には「までに(丁寧に)」作ることが根底にあります。手間暇かけて作った地元の味をぜひ知って、食べてもらいたいと思います。  地域の食文化は、ずっと続いているものですが、知らない人も多くなっています。教科書には、郷土料理をはじめとする日本の伝統的な文化が載っていますが、宮城であれば「ずんだ」といった、代表的なことに限られています。そのため、地域ならではの文化が薄れていかないよう、学びの中で伝えていくことが大切だと感じています。 料理へ挑戦するきっかけづくり  生徒たちと接する中で、時折、家で出されて食べているものに、何が入っているか知らない、興味がないという子がいます。何が入っているか知らないと、いざその味を作ってみようと思っても、何を入れるか分かりません。買って食べるのが当たり前の世の中で、学校で行う調理実習が、作ってみようと思うきっかけになればと願っています。  昨年度まで勤務していた若柳中学校の調理実習で、若柳名産のレンコンを使ったきんぴらを作りました。レンコンは穴が開いているもの、という認識はあっても、なかなか生の食材に接する機会がない生徒も多いのです。生のレンコンは、切ると硬くて、粘りがあり糸を引きます。また、切ってそのままにしておくと色が変わってしまいます。生徒からは、作り方を知れば、こんなに簡単にできるという発見になり、家でも作ってみようという声も聞かれるので、ぜひ、挑戦してみてほしいと思います。 我が家の味を学ぶ  若柳中学校では、年に2回の長期休業を利用して、我が家の味を作る宿題を出していました。  生徒たちは、お母さんやおばあさんに、いつも作ってもらう料理の作り方を教えてもらっていました。茶わん蒸しや餅など、季節ごとに自分の家で食べているものを意識し、親子や孫とのつながりにもなりました。  また、同じ料理でも、出汁や味付け、入っている具が家ごとに異なり、生徒たちはその違いにも興味を示し、教え合いをしていました。親から子へ伝わり、子ども同士で共有することで、我が家の味が伝えられていくのだと思いました。 食で心も育てる  私は生まれも育ちも栗原で、小さい頃から家の野菜や山菜を食べてきました。その中で、祖母や母からは「タケノコのような、あっという間に大きくなるものを食べることは、その生命力を食べるということ」と教えられました。  食べ物の力は、私たちの成長にとって、とても大きいものです。生徒たちには「今食べているものが10年後の自分の体を作る」と、日ごろから教えています。食は、自分の体を丈夫にするだけでなく、心も育てます。生徒たちが親になったときに、1から10まで、毎日完璧に作れとは言いません。手抜きをしても良いのです。週に1回だけでも、手間暇かけたものを作って食べてもらいたいと思います。  さらに、ここぞというときには、郷土の「までな」料理を、栗原の新鮮でおいしい野菜で作ってみてください。その料理は、この先の子どもの記憶に残り、作り続けられることで、我が家の味になるのではないか、と思います。 写真 ▲若柳中学校の生徒たちによる調理レポート 5ページ 【特集】ばぁばの味を伝える~栗原のおばんざい~ 旬の時期に地元の食材をたくさん食べよう  皆さんが普段から食べている食材には、旬と呼ばれる時期があります。旬の野菜は、市場に多く出回ることから、値段も安価で、入手しやすい特徴があります。また、通年で食べられる食材でも、旬の時期には栄養価が高まるといわれています。  自然豊かな栗原では、おいしい野菜や山菜が、たくさん採れます。地元で採れたものを消費することを「地産地消」といい、地場産のものは新鮮で、どんな人が作ったものかが分かる、安全な食材を食べられる利点があります。 ●栗原で採れる食材の一例  □春 イチゴ、山菜など  □夏 ズッキーニ、カボチャ、ソラマメ、ブルーベリーなど  □秋 ダイコン、自然薯(じねんじょ)、リンゴなど  □冬 レンコンなど  □通年 パプリカ、トマト、キュウリ、シイタケなど ばぁばの手仕事 フキの下処理 春から初夏にかけて旬を迎えるフキ。 山菜らしい、独特な香りと苦みを楽しみましょう。 ①収穫したら、日に当てず、すぐに処理する。葉を取り、皮のままよく洗う。 ②食べやすい長さに折りながら、皮をむく。  ※アクで手が黒くなるので、気になる場合は手袋をする。 ③空気に触れると色が変わるため、水にさらしてアクを抜く。 ④鍋にお湯を沸かし、沸騰したら③を入れ、再沸騰するまで茹でる。 ⑤ザルに揚げ、お湯を切る。  このまま料理に使うことができる。 【塩漬け保存】  ビニール袋に、⑤と、まんべんなく絡むくらいの塩を入れ、袋を縛り、重しを乗せて冷暗所で保存すると、数年保存できる。食べるときは、塩抜きをしてから調理する。 伝えていきたい栗原のおばんざい  栗原に伝わるおばんざいには、どんな季節でも家族においしい食事を食べさせたいという、昔からの知恵が詰まっています。洋食の文化が色濃くなった中でも作り続けられる和の家庭料理は、この先もずっと、子から孫へと伝え続けられることでしょう。  皆さんの心に残る家庭の味には、どんなものがありますか。そこには、家族の健康を願い、心を込めて作られた料理と、作ってくれた人のあたたかな微笑みがあったのではないでしょうか。  栗原の自然の恵みで育った、おいしい食材。普段から料理をする人も、あまり料理になじみがない人も、この機会に栗原の食材を使ったおばんざいを作り、地元のおいしい料理を味わってみませんか。