12ページ 報告 「自然」の詩、「人間愛」の詩 第10回白鳥省吾賞受賞者決定 応募総数1,420編  市では、大正・昭和に活躍した栗原市築館地区出身の詩人 白鳥省吾の功績を顕彰するため、平成11年からこの賞を制定しています。  10回目を迎えた今回は、一般の部(高校生以上)に890編(海外8編を含む)、小・中学生の部に530編(海外1編を含む)、合計で1,420編の応募がありました。  2月22日(日曜日)に、白鳥省吾の親族や来賓の方々が見守る中、市立図書館で10周年記念事業並びに表彰式を行いました。 問い合わせ先 白鳥省吾記念館 電話23-7967 白鳥省吾(平時23年2月27日~昭和48年8月27日)  農民の姿や純朴なふるさとの人々の生活から、深い愛郷心と農民の魂で民衆詩をうたいあげた栗原市築館地区出身の民衆詩派詩人。『大地の愛』など、数多くの詩集を発表。全国約200校にも及ぶ効果を作詞。 13ページ 一般の部 最優秀賞 漁川にて 大澤 榮さん 河岸の湿地でニョキニョキと 体毛のように自生する 蕗を夕餉の膳に乗せるとして ナイフで切り取っている老女に出逢った 漁川はアイヌの住んでいた故郷で そこに山口県などから多くの入植者を 受け入れた 佇む恵庭開拓記念碑(山口県人会)には 明治十九年四月入植六十五戸の 衣食住全てを欠いた茫々たる生業が 血液の色で刻まれていた 桜も柳も白蓮の花も 北海道の毛根から噴き出た魂は イザリガワ(石狩川の支流として)を流れて 豊かな乳房を蓄えるように ソフトボールに興ずる歓声の間隙を縫って 老女に穏やかな夕餉を用意させ 川藻が棚引くような 穏やかな春の風物の風に乗って そこにアイヌの人影も 開拓のひもじさと病魔の中で 逝ったであろう人びとの陰さえ映さず 犬の散歩に付き添う人びと 煙草の煙をゆったりとくねらせる人びと それらをパイ皮で包みこんだように 国道を自家用車が生き交わっている ひっきりなしに行き交わう その光景には 何も知らない他人の顔が感じられ 史実から乖離した世の中でも 時系列で生かされている命の 真価や価値を思わずにはいられなかった 見渡す限りの雪原の原野で 開拓団の人びとはそしてアイヌ民族はと 想像してもしきれない鉛の荷車を 押しているような感覚に襲われて 思わず私は漁川橋から後ろを振り返っていた 背後から魂に付かれた者の強迫にも似て 少・中学生の部 最優秀賞 地の底から 菅原 力さん あのとき、 ぼくは、おじいちゃんといっしょに 田んぼの仕事をしていた。 いきなり地面がゆれはじめ、 地の底から、ドドーンと大きな音が。 ぼくは、おもわずおじいちゃんの 太いうでにしがみついた。 心ぞうがドキンドキンとなった。 広ほうで、しん度六強という放送が流れた。 栗こま山がくずれたと聞いて、 ぼくは、あおくなった。 空を見上げると、 つぎつぎとヘリコプターがとんでいく。 消ぼう車もサイレンをならして、 ぼくの家の前を通っていく。 ぼくは、こんなにひどい地しんと知って こわくなり足がふるえ出した。 次の日は、日曜日で、 ぼくは、朝から夜までテレビのニュースを 見続けた。 ぼくの家のそばにも三迫川があり、 川のけっかいが心配だったからだ。 水をくみ上げるポンプがふえてよかった。 一回も顔を見たことがない人やしゃべった ことがない人のすがたがテレビにうつった。 多くの人たちがふっきゅう作業にきてくれ てうれしかった。 それから何日かたって、 ぼくたちの学校に手紙がとどいた。 東京都の学校の子どもたちからだった。 一回も顔を見たことが子どもたちや しゃべったことがない子どもたちもぼく たちのことを心配していることを知って うれしかった。 まだまだ地の底からのよしんは続いている。 それでもぼくは、元気を出して、 学校へ通っている。 審査結果 ※敬称略 一般(高校生以上)の部 【最優秀賞】 『漁川にて』大澤 榮(北海道恵庭市/大学教授) 【優秀賞】 『ハッタギ追い』高橋 泰子(宮城県加美町/農業) 『馬鹿親父』門馬 貴子(福島県南相馬市/主婦) 【審査員奨励賞】 『人間愛』菅原 文子(宮城県栗原市/無職) 『私のルーツ』大城 ゆり(沖縄県開邦高校2年) 小・中学生の部 【最優秀賞】 『地の底から』菅原 力(栗原市立津久毛小学校4年) 【優秀賞】 『夜の旅立ち』岡崎 佑哉(北海道/私立札幌大谷中中学校1年) 『指定席』大谷 加玲(兵庫県/私立京都女子中学校2年) 【特別賞】 『空が笑った』後藤 香澄(栗原市立金成小学校5年) 『とくいになったヘチマ』髙橋 歩夢(大崎市立清滝小学校4年) 『だっこく』髙橋 渉(栗原市立大岡小学校6年) 募集期間  平成20年7月1日(火曜日)~10月31日(金曜日) 審査員 ※順不同・敬称略  石原 武(元日本詩人クラブ)  今入 惇(日本現代詩人会会員)  佐々木 洋一(日本現代詩人会会員)  佐々木 邦子(小説家・日本ペンクラブ会員)  三浦 明博(小説家・日本推理作家協会会員)