• くりはら研究所だより第65号
  • 2012年6月16日(土曜日)発行

【活動レポート】第5回ジオパーク 国際ユネスコ会議in島原(しまばら)

5月12日(土曜日)から15日(火曜日)/長崎県島原市

平成20年岩手・宮城内陸地震で、崩落や地すべりなどの被害を受けた栗駒山麓の地形や景観を防災教育や学術研究、観光の場など幅広い分野で活用する方法について、第5回ジオパーク国際ユネスコ会議に参加し、国内外の先進地の現状を学んできました。

会議とジオパーク

画像:基調講演の様子

 この会議は、自治体などでつくる島原半島ジオパーク推進連絡協議会と、世界ジオパークネットワークが主催し、5月12日(土曜日)から4日間の日程で「島原復興アリーナ」などを会場に、31カ国から約1,000人のジオパーク、ユネスコ関係者および一般市民が参加しました。世界ジオパークの保全や活用策を地球科学や環境・観光・教育などの専門家から、研究や提言発表などを目的に、2年に1度開催される国際会議で、日本では初開催です。
 ジオパークとは、地球活動の貴重な地質遺産に親しみ、ジオを学び(ジオツーリズム)、楽しむ自然公園です。近年は、地質災害に対する理解や防災への取り組みにも貢献するものとして、また、観光資源として地域の活性化に役立つものと期待されています。日本では、島原半島のほか、糸魚川(いといがわ)、洞爺湖(とうやこ)・有珠山(うすざん)、山陰海岸が世界ジオパークの認定を受けています。

島原全体が自然遺産

画像:普賢岳・平成新山

 会場の島原半島は、平成21年8月22日、日本で初めて世界ジオパークの認定を受けました。島原半島は、北に有明(ありあけ)海、東に阿蘇火山、西に橘(たちばな)湾、南に天草(あまくさ)を望み、半島の中心部に雲仙普賢岳(うんぜんふげんだけ)、標高1,486mの平成新山(へいせいしんざん)があり、豊かな自然と海に恵まれた風光明媚(ふうこうめいび)な地域です。平成2年、雲仙岳が198年の眠りから覚め噴火、翌年には大火砕流により43人の尊い命が失われました。その後、4年半にもわたる噴火活動により島原半島は経済、観光など多方面で甚大な被害を受け、災害から今年で20年が経過し、未曾有(みぞう)の災害から復興を遂げています。

大規模地すべりとジオパーク

画像:荒砥沢地すべり(復旧前)

 平成20年6月14日(土曜日)に発生した「平成20年岩手・宮城内陸地震」は、最大震度6強を観測し、尊い人命を失うなど、甚大な被害を受けました。多くの困難に遭遇し、この大災害を克服するとともに、震災の記憶と経験を風化させることなく、後世に伝えていかなければなりません。その一つの方法として、ジオパークの手法が挙げられます。
 また、この地震は世界的にもまれにみる山地災害を引き起こした内陸直下型地震として多くの教訓を残し、あらためて心構えの大切さを教えてくれました。

自然災害と防災

 「人と火山が共生する」島原半島は、雲仙の火山活動により形作られてきた地質と地形が、半島に住む人々の暮らしに温泉や湧水など、たくさんの恵みをもたらしてきました。その一方で、火山は災害という一面も持ち合わせ、住民は幾度となく被害を受けてきました。
 また、昨年3月に発生した東日本大震災でも多くの人命が奪われ、東北地方の太平洋沿岸部は地震と津波により壊滅的な被害を受けました。このような災害に対して、減災や人命の犠牲を防ぐためには、過去に起こった災害を学び、認識し、伝えていく必要があります。
 そのために、栗駒山麓崩落地の地形・景観を貴重な遺産または資源として、防災教育・学術研究・観光の場などに幅広く活用することが、最も大切なことではないかと、この会議を通して感じました。

【活動レポート】くりはら長屋門セミナー

長屋門の構造と価値を知る

4月26日(木曜日)/栗原文化会館

私たちの暮らしの中に何げなく建っている長屋門。この長屋門の価値や魅力を再認識する機会として、構造的な特徴や大工職人のワザなどに触れながら、その当時の暮らしを学びました。

  • 講師 東北職業能力開発大学校 建築施工システム技術科 准教授 星野 政博(ほしの まさひろ)氏
  • 参加者 15人
画像:講師への質疑の様子

 講師の星野氏は平成19年から学生の応用課題実習テーマとして市内の長屋門の調査、研究を行っています。具体的には所有者の方々への聞き取り調査や、長屋門マップの作成、長屋門の実測調査を基に構造的模型を作ったりしています。
 今回は、これまで実測調査した若柳地区2件の長屋門の調査結果を踏まえながら講義をしていただきました。
 星野氏と学生の皆さんが調査した資料によると、長屋門は、江戸時代に近世諸大名の武家屋敷の門として多く建てられたもので、門番や家臣、使用人の居所などに利用されていたようです。
 市内の長屋門は農家が持つ門として、左右の部屋は作男と呼ばれる使用人の住まいや農作業、農機具を収納する場として利用されていました。現在も倉庫や作業場として使われているところが多いことから、星野氏は「農家型長屋門」と命名し、調査、研究を続けています。
画像:会場では、調査結果のパネルや長屋門の模型を展示 講義の中で、長屋門の外観や屋根の構造に触れ、屋根の形式には切妻、寄棟、入母屋という形式があり、その地域の気候や長屋門の使途によって造りに違いがあること、また、桁の部分を外に出すことで力強さや存在感を表現する出桁構造は気仙大工の特徴の一つであることなど、伝統工法や大工職人のワザを知ることで、長屋門がより魅力的に見えることを説明していただきました。
 最後に、「栗原の長屋門は比較的裕福な農家に認められていたもので、今もこれだけ多くの長屋門が残っていることは全国的にも事例が少なく、大変貴重なことです。今後、地域の歴史的遺産として大事に保存し、観光資源に活用していただきたい」と呼び掛けていました。

【募集】くりはら観光塾 栗駒山麓ジオパーク講演会「ジオパークから学ぶこと」

市では、平成20年岩手・宮城内陸地震で被災した栗駒山麓の崩落地の地形・景観を中心に、「ジオパーク」としての認定に向けたさまざまな事業を展開していきます。

画像:荒砥沢地すべり

 今回は、市民の皆さんのジオパークへの理解を深めるため、日本ジオパーク委員会事務局員の渡辺 真人(わたなべ まひと)氏〔独立行政法人 産業技術総合研究所〕を講師に招き、講座を通じて、ジオパークの理念や動向などを学びます。
 市がジオパークの認定を目指していくためには、市民の皆さんのジオパークに対する理解と協力、盛り上がりが不可欠です。参加費は無料ですので、ぜひ参加ください。
※「栗駒山麓ジオガイド養成講座」と共催事業として開催します。

  • 日時 7月22日(日曜日)午後1時30分から

  • 場所 栗駒総合支所大会議室

  • 演題 ジオパークから学ぶこと

  • 申し込み くりはら研究所に電話で申し込みください

画像:講師 渡辺 真人 氏

【講師】渡辺 真人 氏(理学博士)
1962年愛知県生まれ。
1987年京都大学大学院理学研究科修士課程地質学鉱物学専攻修了、通産省工業技術院地質調査所入所。
現在、独立行政法人産業技術総合研究所地質標本館アウトリサーチ推進グループ長、2006年より日本におけるジオパークの推進に関わり始め、2008年から日本ジオパーク委員会事務局員。2011年4月、平成23年度科学技術分野の文部科学大臣賞表彰(科学技術賞)を受賞。

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