受賞作品を、原文のまま掲載します。また、編集の都合上、すべて横書きにしています。
※敬称略

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見たことのない魚を食べたくて
僕は、冬、家出した

東北の冬は寒いから、とにかく赤ン坊が
恋しいんだ
赤ん坊の手が足が、よだれが、
僕は、とにかく
恋しいんだ

急に飛び出したモンだから
何も履かずに雪を踏みつけていた
裸足の僕に、古い粘土をくれたあの人は、
もう、海を渡ったのかな・・・

さて、何をつくろうか
僕は、夢の中で考えた
きりんでもないしぃ、目玉でもないしぃ、
う―ん、うう―ん、う―
そうだ!唄を、つくろう!唄だ!

あれからどれだけの月日が流れたのだろう
流浪の商人に話をきくと、
あの海岸線には、
僕の唄が、
まだ
まだ
きこえているらしい・・・

けれど僕は死んでいる
見たことのない魚を食べる、その前に、
いつのまにか、海に沈んでしまって、
僕は死んでしまったのだ

古い粘土でつくった唄を、
母に捧げて、
僕は、もっと、        しずむ。