受賞作品を、原文のまま掲載します。また、編集の都合上、すべて横書きにしています。
※敬称略

原文はこちら

「まるさん醤油」
私の門の表示である
でも今は
醤油の臭いもしない
材料のまめも塩もない
醤油を作る人も売る人もいない
おじいちゃんがやっていた醤油屋
お母さんが子供の頃は
こんなんじゃなかった

おじいちゃんと
おばあちゃんが
朝早くから店の準備をする
お客さんが来たら
笑顔で醤油を売る

でももう
おじいちゃんが醤油を
作っている姿は見ることができない
でも看板だけ残っている
どうしてこの看板ははずさないの
はずさない理由を知る人は
もういない

看板がぽつんと残っている
この広い広い敷地にあるのは
昔あったという跡だけ
取り壊されたという跡だけ

店があった場所は公園になった
子供達が遊んでいる
店を残さず
公園を残したおじいちゃん

おじいちゃんは
遠い空の上から
ぽつんと残った看板を見つめ
何を思うのだろうか