受賞作品を、原文のまま掲載します。本文に読みがなを〔 〕書きで添え、編集の都合上、すべて横書きにしています。
※敬称略

原文はこちら

さみしいと うさぎは死んでしまうのだって
死んで さみしかったことを知らせるのかな
こんなにさみしかったのに 気づいてもらえ
なかったと かたく つめたく なって
ゲージのすみで 死んだうさぎ
野菜クズは うさぎのために
いつも冷蔵庫に入れておいたし
天気のいい日は ベランダに
ゲージをだして 日光浴もさせたけど
それは 愛じゃなかったのかな
何が うさぎをさみしくさせていたのだろう
ほどよく焼けたクロワッサンみたいな 
うさぎだった 焼きたてのパンのように柔ら
かく丸まって 人肌のような ここちよい空
気を いつも発散していた
こうして思い出そうとすれば
うさぎの愛らしさや 命のぬくもりが
ありがたかったと わかるのに
鳴き声も立てない 無表情なうさぎを
ベランダの一鉢のように
わたしは 感じていたのかもしれない
お腹がいっぱいでも 雨風〔あめかぜ〕が防げても 暑く
も寒くもないのに 生きものは死んでしまう
唐突に 生きることを あきらめてしまう
誰かを癒したり 誰かに叱られたり 褒めら
れたり 話しかけられたり 見つめたりされ
ながら
生きているものは わずかに細い命の糸を
紡いでいくものなのかもしれない
自分の存在が 誰かに迷惑をかけたり
誰かを喜ばせたりすることで
命のベクトルは 明日〔あした〕へ向うのかもしれない

うさぎの亡骸を ベランダから見える
ハナミズキの根元に埋めた
空が 急に 秋になった気がした
決壊したダムのように
わたしは泣いた