受賞作品を、原文のまま掲載します。本文に読みがなを〔 〕書きで添え、編集の都合上、すべて横書きにしています。
※敬称略

原文はこちら

松が鳴る
蓬々と風が吹く
そろそろ来るか、雪の予感

楢の切株に腰を下ろし
ペッ、と梅干の種を吐く
おお、さみい、寒〔さみ〕いなあ
飯は食〔く〕うたし
さて、火を付けるか

これでお仕舞〔しめ〕えだ、最期の炭焼きだ
村で炭焼きを始めたのはいつのことだったか
ともかく食〔く〕えなかったんだな、炭焼いてもな
爺さまがよう話してたど
炭一揆、剛毅だったご先祖のこと

長岡藩栃尾組炭村、飢饉続きで乞食暮し
苛斂誅求に耐えかねて
文政十三年(一八三〇年)、秋
食〔く〕える炭焼き保障せえと
筵旗を振った
ほら貝を吹き鳴らした
黒い足が走った、峠へ
長岡の町見下〔みお〕ろして、男たちが蛮声を上げた
いざ、城下へ、長岡城下へ

けどよ、庄屋と横目が煩く付き纏い
ほろほろ抜け帰〔けえ〕る奴もいて、ついに退散
顔に炭塗り真っ黒け
山に散〔ち〕れ、口を開〔あ〕けるな、喋っちゃならぬ

へへへっ、おめえだれだ

アッハハハ、八十二歳の繁蔵が笑う
オレだって村一番の炭焼きだ
隣村から嫁も来た

さあ、火ィ、入れんど