栗原への思い/上野 健夫(第12回白鳥省吾賞一般の部 最優秀賞受賞者)

 「春とはいっても、まだ少し寒かったね。雪も降ったしさ。ホテル『エポカ』はほんとに静かだった。」
 私の持病が心配で同道した妻が懐かしげに言います。初めて行った栗原への旅を思い出します。
(テレビでも、新聞でも、栗原とか栗駒とか言う名が出ると注視します。あの人、栗原の出身だって、そう言えばあの劇作家もそうだってよ。栗原ってすごいのねえ、って具合です。)

 けれど、あれからすぐ三・一一だったのです。東日本大震災、フクシマ原発事故、そこから続く悲惨な状況、何も出来ない無力さの中で胸が痛むばかりです。栗原もまた大変なことでした。
 あらためてお見舞い申し上げます。
(息子が仙台で被災し、とはいえケガをしたわけでもなく、一週間くらいで家に帰り着き、一ヶ月ほどで学校に戻り、我が家も周りからはげまされたりしたのでしたが・・・)
 そして、今、政府、東電の無責任、無策に憤りつつ、日々生まれる復興へ向けての人々の新しい動きに感動してもいるのです。

 「白鳥省吾賞」を受賞して、詩誌で紹介されたり、インターネットを通して知った友人たちから、「おめえにそんな才能があったのか。ヤルじゃあねえか、コノヤロ」などと妙な電話があったりして、うれしさと一緒に戸惑ったりしているのです。

 その後も拙い詩を書き続けています。今、明治初期の、ふるさとであった世直し騒動についての叙事詩に取り組んでいます。「白鳥省吾賞」を受賞した一人として、その名に恥じない作品を書く、その自覚が胸の底にあります。私がそうであるように、多くの詩を愛する者たちが「白鳥省吾賞」に励まされているのです。携わる人たちの苦労を思いつつ、自然、人間愛をうたう「白鳥省吾賞」がますます発展するよう心から願っています。