受賞作品を、原文のまま掲載します。本文に読みがなを〔 〕書きで添え、編集の都合上、すべて横書きにしています。
※敬称略

原文はこちら

六月、じいちゃんの家へ行った
近くにある瓢湖に行くと、ほとりに
こいのぼりが泳いでいた。
近くでよく見ると、うろこが・・・人の手形だ

じいっと見ていたら
「おれたちが作ったんだよ。」
と知らないおじさんに声をかけられた

おじさんは優しいまん丸の目で、話し始めた
「おれたち、福島から避難してきたんだよ。」

おじさんは東日本大震災で被災した人だった

「避難してきた人たちみんなで自分たちの手
形をおして、こいのぼりを作ったんだよ。」
そう言うと、おじさんの優しい目が、少し、
くずれて、涙がにじんできた
「ぜーんぶ、なくなってしまったんだよ。何〔なに〕
もかも・・・。あーあ、だめだよなあ。もう、泣
かないって、決めたのになあ・・・。」

いったい、おじさんは、あの日から、どれく
らい涙を流したんだろう
涙が止まらない日が、あったかもしれない

悲しみは、いつも勝手にやってくる。
喜びは、自分たちで作らなければ、やってこ
ないのに。

おじさんが、こいのぼりを見上げた
「よおし、今度こそ、二度と泣かねえぞ。」
おじさんの元気な声が空にひびいた

風にゆれる、たくさんの手形たち
その手が、大空へ飛び立ち、必死に何かをつ
かもうとしているように、
ぼくに見えた