受賞作品を、原文のまま掲載します。
 本文に読みがなを〔 〕書きで添え、編集の都合上、すべて横書きにしています。
 ※ 敬称略

原文はこちら

黄色いことりが鳴いている。

森はしずかに轟いている。

梢はそれに呼応する。

川が水に音を与え、

水は森に香りを添える。

獣は横たわっている。

雨の鎮魂歌が森を奏でる。

屍は土にくわれる。

幼い樹が芽生え、

森に緑がまた一つ加わる。

黄色いことりが鳴いている。

黄色いことりは話している。

生まれては消え、消えては生まれるというこ

とを、

音も匂いも色も、みんな森からはじまるとい

うことを。

黄色いことりはなおも話し続けている。

森の彩りや獣の歌や水のにおいやそれら全部

は、

雲の絹糸をすり抜けて

藍色の闇に蒸発してしまうんだ。

だけど時たま空に昇れなかったしずくが

森の住人に拾われていく。

しずくは、

伝説や神話や精霊やらになって

住人たちにもてはやされる。

もっぱら、それは森に住人がいたころの話な

んだけれど。

最後のしずくは今にも枯れそうなんだ。

かすかな潤いが森に一粒。

忘れ去られたまま、かろうじてそこにいる。

 

黄色いことりが鳴いている。

森はしずかに轟いている。