受賞作品を、原文のまま掲載します。
 本文に読みがなを〔 〕書きで添え、編集の都合上、すべて横書きにしています。
 ※ 敬称略

原文はこちら

あきは「しょうゆだま」
じいちゃんからもらった
まんまる大きなあめだまは
薄茶色でみたらしだんごのような味
口の中で転がしたその甘さ
テレビの大相撲秋場所中継を
じいちゃんと並んで眺めた日のこと

秋は「金木犀」
家の裏手で香る木は父が植えたもの
小学生の秋、中学生の秋、高校生の秋
幹は太く、橙色の花はこぼれ、力強く香る
受験を控えた年の秋は、特別切なく香り
勉強机脇の窓から庭にいる父を眺めていた
翌年、一人暮らしの部屋で
大学の友人から何気なくもらった
小さな香水「金木犀の香り」を嗅いで
父の姿を思い出した日のこと
秋は「紅葉」
遠く目線のずっと先まで連なる山々
陽あたる細くのびた砂利道に二人並んで
降るような赤、黄、紫の下を歩いていた時
あなたは言いました
私の肩の辺りでゆるんだ赤いマフラーを
きちんと巻き直して
結婚してください
なんて、ありきたりでつまらない台詞
だと思っていたけれど
ざあっと拍手のように音を立てて舞う
もみじがあなたを彩って
わるくないと思えたから
私は頷き
あなたの深緑色のマフラーを巻き直して
そっと指を絡め、歩き出した
それはまだ今日のこと