受賞作品を、原文のまま掲載します。
 本文に読みがなを〔 〕書きで添え、編集の都合上、すべて横書きにしています。
 ※ 敬称略

原文はこちら

窓辺からそそぐ、春の陽射しに、ただ影とな
っている君を前にし、さて君は男の子なのか、
女の子なのかと、ふと考えてみる。私は君の、
とうさんなのだろうか、かあさんなのだろう
か。寝起きに君は、もう、早く、ゆこう、と
ゆうのだね。世はカーナバル。連休の内のた
った一日。子どもの日の今日は、故郷の町を
囲む山々の中で、空に最も近い、あの山の上
の、小さな遊園地へと、ゆこう。君が雨雲の
向うの、それの話をしてくれたのだから。い
いかい。ずっと手をつないで、ゆくよ。山の
上へと向い、ぐるぐるとらせん状に昇ると、
そこが遊園地だよ。家族連れがいっぱい。あ
あ、そんなに焦って走ってはいけないよ。見
失ってしまう。先をゆく君の後ろ姿は、とう
さんか、かあさんかに、似ているのだね。い
ろいろな乗り物に乗り、それでも君は、君よ
り小さな子たちの乗る、小さな乗り物にも乗
りたいのだね。いいよ。五の円の玉にして、
乗せてあげるよ。緩やかに揺れる、最初の揺
り籠も。家族連れでいっぱいだったこの遊園
地。日暮も近づいてきて、人ももう、疎らだ
ね。園内放送が、聞こえてくる。もう、終わ
りだと。いやだ。帰りたくないよと、君はゆ
う。あのお空には、帰りたくないよと、君は
ゆう。分かったよ。最後にこの階段を昇り、
あのサイクルレールへと、乗ろう。いいかい。
ふたりでこの自転車を漕いで、レールの上を、
空中散歩するんだよ。雨の日も、風の日も、
一緒にペダルを漕いで、ゆくんだよ。ほら、
あそこに見えるのが、とうさんの山。そこに
見えるのが、かあさんの山。君はそれを水色
の目で、何も言わずにじっと、見ているのだ
ね。ほら、夕陽が沈んでゆく。とうさんが、
夕焼けになってゆく。かあさんが、夕焼けに
なってゆく。君が、夕焼けになってゆく。夕
焼けに、さようなら。寂しくなったら、また
逢いにおいで。いつでも君を、待っているよ。