受賞の春と人々に/花潜 幸(第16回白鳥省吾賞一般の部 最優秀賞受賞者)

 受賞後の一年、とても慌ただしく過ぎていった一年。振り返ると春夏秋冬夫々の日々に出会った人々と出来事が、フィルムの逆回しのように、心に戻って来ます。
 私には、受賞を機会として手に入れた大切な心の変化があります。それは詩作に対する自分の立ち位置が大きく変わって来たことです。賞への応募を通して、白鳥省吾賞の主題テーマである。「自然と人間愛」のことを、何度も繰り返し考えました。三回の応募で、二作ずつ、合計六作品を本テーマの下、思索し書き上げたのです。それまで私は詩を書くのに特別に意識したテーマを設定しては居ませんでした。心によぎるものを単純に並べていたと言ってよいかもしれません。あえて言うなら、不思議で面白いもの、暗喩やオノマトペなどの言語表現そのものに独自性を求めひたすら言葉に新奇な工夫を凝らすことばかりを考えていました。結果として一時の消耗品のような作品が多かったように思います。
 こうした言葉の技巧本位の道筋に歯止めをかけたのが、白鳥省吾賞の「自然と人間愛」、素朴に人の心を柔らかく包む主題、それに素直に正面から向き合い詩を書いた事であったと思っています。私の詩は変わりました。書くこと読むことに、快楽ではなく僅かなりとも感動を求める様になりました。どのような内容の作品を書こうと、雰囲気や驚きの表現だけに終わらぬよう幾度も推敲を重ねる様になりました。
 詩情は初め言葉の外にあります。私はそれを集め、舌の上にではなく心の何処かに静かに撒いておきます。これは小さな感情の種です。そこで実ったものを言葉に築き、詩の形に仕上げて外に咲かすと、読む人はそれを摘み上げ、自分の何処かで花を咲かせてくれます。そんな機会を私に与えて下さった受賞の春と人々に、改めて深く感謝申し上げます。