少年のまなざし/草野理恵子(第15回白鳥省吾賞一般の部 最優秀賞受賞者)

 もう昨年の授賞式から一年が経とうとしております。前年の優秀賞と二年続けて栗原の地を踏ませていただきました。関係者の皆様に温かく迎えていただいた素晴らしい授賞式を昨日のことのように思い出しております。 

 そして、記憶によみがえるのはその授賞式で前列に居りました眼鏡をかけていた少年のまなざしです。私は受賞のスピーチで、作品の元となりました筋ジストロフィーの教え子のことを話させていただいておりました。死の床で大学の卒論を完成させた姿を。命を削って学んでいる姿を。私もかつてのことを思い出し声に詰まっておりました。そしてふと前列の少年を見ると涙を浮かべ一生懸命、拳で目をこすっているではありませんか。きっと、今も彼の心の中で短くも全力で生き切った教え子たちの姿が息づいていることと思います。私はそのように一人の少年の心にかつての教え子の姿が刻まれたことを思うと今も目頭が熱くなります。このような機会をいただけましたことを心より感謝いたします。

 私事ではありますが、昨年秋に第一詩集『パリンプセスト』を出版させていただきました。これもひとえに白鳥省吾賞受賞のおかげと深く感謝いたしております。パリンプセストとは書かれた文字等を消し、別の内容を上書きした羊皮紙の写本のことで、文字の下にまた文字があることから、私はこの世界の下に幾層もの世界がありそれを紐解くように詩を書きたいと思いました。

 白鳥省吾賞をいただき励まされましたことでこれからも詩と向き合って生きていく気持ちを新たにいたしました。栗原市の皆様に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。