受賞作品を、原文のまま掲載します。
 本文に読みがなを〔 〕書きで添え、編集の都合上、すべて横書きにしています。
 ※ 敬称略

原文はこちら

カッタン、コットン、各停列車は走る
ふるさと新潟の日本海を左に
二年前、暮らし始めた気仙沼へ

はて、
日本海は、こんなに穏やかだったか
私の青春の日本海は
白い波の兎が跳ねる鉛色の海だった
しかし今、目の前に広がっているのは
きらきら光る穏やかな海だ

実家の玄関を出る時
一度も私を誉めてくれたことのない父が
「たいしたもんだ」
と、はにかみながら、ポツリと言ってくれた
その顔を思い出し
なおさら海が眩しく光った
私の記憶の日本海は
青春の心の波だったのかもしれない

やがて列車は、右に進路を変え
日本海に背を向けて太平洋を向く
おとうさん、おかあさん
私は、気仙沼へ帰るけど
今日、新潟の海に沈む夕日は
明日、気仙沼の海に昇るんだね 

仮設住宅に着いた夕暮れ
「こんにちは」
と言ったら
「おかえりなさい」
とかえってきた

おとうさん、おかあさん
私は、同じ、きらめく海の傍で
生きています