受賞作品を、原文のまま掲載します。
 本文に読みがなを〔 〕書きで添え、編集の都合上、すべて横書きにしています。
 ※ 敬称略

原文はこちら

 春がきて、夏がくると
 当たり前のように秋になると思っていた
 でも、一歩外へ踏み出せば
 そうじゃない国ばかりだ 

  「人は所詮一人なんだよ」
 そんなことを考えていた私が、愛を知り
 誰かがいないと絶対にできないことをした
 小さな命を授かったのだ

 呼吸もうまくできない
 冷たく尖った陣痛の中で
 ふわっと湧いてくる
 この陽だまりのような気持ちは何だろう

 人は、失うものがなければ強い
 だけど、土壇場で一番強いのは
 失いたくないものがある時だ

 命の尊さよ
 産道をぬける確かな感覚よ
 こうして私も生まれたのか

 動物を慈しむ感情に似ている
 親の愛というのは
 なんと無条件なことだろう
 あなたに会えたことは
 決して当たり前のことじゃない 

 診察室の無機質に放つ蛍光灯が
 ぱっとやわらかな光に
 変わってみえた 

 生命の息吹を守りたいと思った
 さあ、私も強くなろう