受賞作品を、原文のまま掲載します。
 本文に読みがなを〔 〕書きで添え、編集の都合上、すべて横書きにしています。
 ※ 敬称略

原文はこちら

カゴのなかに
大きくなりすぎた茄子を
背をかがめてもいで入れている
夕暮れが冷気をまとって
Y子さんの痩せた肩に降りる 

なじまない顔のひとのことばに
ふいと眼をそらせて
地べたに南瓜を投げつけたのは
ほんの少し前
そのひとに返せなかったことばの代わりに
割れ口から黄色い汁がこぼれた 

ながいあいだ独りでまもってきた
旧い家と庭の木々や花
畑に育つものの息づかいに
呼吸を合わせて添っているうちに
畑の向こうまで歩いていくと
家に戻れなくなっていた 

なじんだもの あたらしいもの
入れ変わることにそれほど揺らぐのか
Y子さんは
虫のついた栗を拾い熟さない柿を指さし
大きな茄子をもぎつづけている 

ひび割れた南瓜は
だれかの手で拾われて
日の落ちた台所にそっと置かれていた