受賞作品を、原文のまま掲載します。
 また、編集の都合上、すべて横書きにしています。
※ 敬称略

原文はこちら

参観日の図書室、本の分類の授業だ。
 「ホタルの歌」は背表紙を貼り替えた古い本。
 貸し出しカードで番号を調べていた。
 回って来た先生が言った。
 「あれっ、これ、蓮君のお父さんじゃない。」
 借りた人の中に父と同じ名前があった。
 本当に父なのかな。
 なぜだかドキドキした。

 母が近寄ってきて、名前を確かめて驚いた。
 「お父さんが昔読んだ本だね。すごいね。」
 友達の父の声が聞こえた。
 「親子で同じ本とは、やっぱ血引いてんだ。」

 四年生の一月に借りている。
 タイムスリップして、ぼーっとした。
 小学生の父が、すぐ隣にいる。
 でも、目が合うとはずかしいな。
 勉強は何が得意だったの。
 野球は好きなの。
聞いたら答えてくれるかな。
 僕と顔が似ているかな。
 「席に戻り、調べた番号を整理しましょう。」
 先生の声が聞こえて、急いで本を棚に返した。

 夕食の時、今日のことを父に話した。
 「まだあったんだなあ。よく見つけたな。」
 「ホタル、夏に家の前で一緒に見たよね。」
 「お父さんの小さい頃は、もっとホタルが一
 杯飛び交っていて、きれいだったんだぞ。」
 「ぼくも見てみたいな。」
 「あの本、借りてこいよ。」
 「うん。まだ読んでないから明日借りてくる。
 そう言えば、お父さんのカードの名前の字、
 少し雑だったよ。」
 「そんなことないよ。お父さんは達筆だよ。」
 大きな声で父が笑った。
 今度読み終わったら父とたくさん話をしよう。