受賞作品を、原文のまま掲載します。
 また、編集の都合上、すべて横書きにしています。
※ 敬称略

原文はこちら 

 キャンプの夜、焚火の前で空を見上げた。
 そこには、街では決して見えないくらいの
 たくさんの星々が揺らいでいた。
 すると、星の揺らめきに合わせるように、
 優しい風が、僕の頬をなでた。
 シャラシャラ。さわさわ。
 涼しさの中に、暖かさを含んだ風だった。
 穏やかな山の声が、耳に心地よかった。

  すると、突然。
 一匹のひとり虫が焚火に燃え散った。

  それは、たったの一、二秒のことだったけ
 れど、僕には一つの命が消える瞬間がゆっく
 り、はっきり見えた。
  ひとり虫が炎を羽ばたかせ、鱗粉の火の粉
 をちりばめながらいなくなる様子は、思わず
 見惚れてしまうほどに美しいものだった。

  我に返ると、山は黙りこんでいた。
 まるで、命あるものが自分ひとりだけになっ
 てしまったかのような静かさだった。

  キャンプの夜、焚火の前で空を見上げた。
 さっきよりも、ゆらめく星が少なくなってい
 るような気がした。
 すると、星たちを吹き消すように、
 強めの風がふいた。少し肌寒い風だった。
 ジャラジャラ。ざわざわ。
 僕は自然に「無情」を感じた。

  もうそろそろ寝よう。みんなが寝ているバ
ンガローに戻ろうとしたとき、入口に置いて
あるバケツに一匹の魚を見つけた。それは夕
方に釣ったニジマスだった。僕は、それを塩
焼きにして、食べてから寝ることにした。
 少しからくて暖かい塩焼きを食べたとき、
僕は今までの人生で一番「生」を実感した。