受賞作品を、原文のまま掲載します。
 また、編集の都合上、すべて横書きにしています。
※ 敬称略

原文はこちら

「恵璃華、ちょっと見て、見て。」
調理場から聞こえるお姉ちゃんの
かん高い声。
「どうしたの?」
行ってみると、
包丁を手に、まな板の上にのっている魚を
しきりに指さしながら、
「これ、これ!」とお姉ちゃん。
「んん?何、何?」
指さす方を見てみると、
(ぎょえ~)
ぱっくり開いた魚のお腹にもびっくりだが、
その中に、まるまんまのイカ二匹と小魚一匹。
こんなの初めて見た。
(ずいぶんぜいたくだなあ)
そう思いながら、海の中を思った。
これは赤ちゃんイカみたいだから、
卵からやっとかえって、
海の中の小さな生き物を一生けん命食べて
ここまで大きくなったんだろう。
そして、足を広げたり、とじたりしながら
ふんわり、しゅっ。
ふんわり、しゅっと兄弟で
気持ち良さそうに泳いでいたんだろう。
それを、この魚に一気に飲み込まれたんだ。
この小魚も、
大きな口を開けたこの魚に追いかけられて、
尾びれを必死に動かして逃げたけど、
「ガブッ」とやられちゃったんだ。
「食ってやる~」
と山んばに追いかけられた
『三枚のお札』のこぞうさんの恐怖を
このお腹の中のイカと小魚は味わったんだ。
かわいそうに・・
お腹の中であばれたりしなかったのかな?
この魚を今度はわたしたちが食べる。
何だか、すまないなあ。
たくさんの命をもらっているんだなあ。