栗原の朝に/くりす たきじ(第13回白鳥省吾賞一般の部 最優秀賞受賞者)

  辰年生れの私は、昨年4月に60歳の誕生日を迎えました。その誕生日を目前にした2月、生まれて初めて東北の地に、足を運ぶことができたのです。新大阪から、くりこま高原までの往路は新幹線の旅でした。東北新幹線はもちろん初めてのこと、その沿線の風景はとても新鮮でした。

 授賞式の朝、宿を出て十数センチの積雪のなかを歩きました。私は履き慣れない革靴を履いていたのですが、早朝にもかかわらず、歩道の雪は1メートルほどの幅できれいに除雪されていて、東北の皆さまの労苦に感銘しました。授賞式会場を確認してから、2時間あまりゆっくり歩いて、栗原の街を一巡りしました。あの日からもう、一年が過ぎます。

 頂いた賞状には「今後、益々のご活躍を期待し、この賞を贈ります」とありました。30年余り、現代詩を書き続けてきた私に、ひとつだけ遣り残した仕事があります。それは、いつか小説を書きたいという想いです。60歳の昨年は、その想いにチャレンジする、大事な年だったのです。

 小説は正月から書き始めていましたが、受賞は何よりの励みとなりました。その小説はまだまだ拙く、世に出せる作品ではありませんが、10月に脱稿し、220枚の処女作となりました。そして今、二作目をほぼ書き終えたところです。

 白鳥省吾賞は私の詩作の頂点とも言えますが、60歳の再出発は、あの日の、栗原の街から始めたのだという想いでいます。大震災の年に描いた受賞作は、私と東北の地を結んで、新たな創作の道を与えてくれたのです。

 授賞式では、2010年に埼玉県羽生市でお会いした、石原武先生との再会が叶わず、ただひとつ心残りとなりましたが、温かく迎えてくださいました、栗原市民の皆さまや、市職員の皆さまには心から深く感謝しております。ここに改めてお礼申し上げます。

 大震災からの復興はたいへんな時間を必要とします。決して、風化させてはいけない復興への想いを、私も共有し、希望に息づくことばを描き続けたいと思います。そうして、いつの日か再び、東北の地を訪ねたいと願っています。